特集 思い出・追悼論文
想い出
清水由隆先生を憶い偲びて
中川 繁憲
pp.458-459
発行日 1954年8月10日
Published Date 1954/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201077
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清水由隆先生は佐賀県武生に生れ佐賀中学五高を経て東大医学部に進み卒業後は木下正中先生に師事せられ名古屋医専長崎医専長崎医大教授を経て長崎医大名譽教授に推され退官後は湯に親しみ悠々自適の生活を楽しみ傍ら婦人科を開業して近傍の難治の疾患を治して感謝せられ老いて尚矍鑠として地方医政の面にも盡瘁せられた。
先生は大体健康の方で健啖家でしたが昭和28年夏頃より胃腸の加減悪しく好きな煙草もそれが原因だとて止めておられたやに承りました。然し昭和29年1月末レ線検査の結果胃癌だと決定し開腹手術を受けられたが既に肝臓其の他にも転移を起し試験開腹に終つた事は運命とは云いながら先生の為めに返す返すも残念であつた。手術は2月14日に行われ2週間経過した2月28日突然思い立つて広島から佐世保共済病院に御見舞申上げた。病院についたのが午後2時過ぎで病室にはどなたも見えず先生は新聞を見ていられたので御気分がよい様に思われた。暫く室外で待つて御様子を伺つた上で入ろうと躊躇していたが意を決して室に這入つて一礼しました。先生は意外な面持でいられたが新聞を枕辺に置いて御苦労有難と云われ冥目をされ,ややしてどうも食慾がなく元気が出ない。こんなことではどうもならん。今暫は誰にも会わぬことにしているから君から会つた人にもそう云つて呉れと云われたので之は悪いことをした。もう少し経つてから来ればよかつたと自責を感じ御再起を御激勵申上げて御別れした。
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