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書評 「『BRAIN and NERVE』2018年4月号増大特集 Antibody Update 2018」
犬塚 貴
1,2
1岐阜市民病院
2岐阜大学
pp.937
発行日 2018年8月1日
Published Date 2018/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201102
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5年前に出版された「Antibody Update」をさらにアップデートした増大特集号が本誌編集委員の山口大学神田隆教授の企画で出版された。抗神経筋抗体の病因性が分子レベルで語られ始めた1980年代初期から30年近くなるが,この分野における最近の発展がそれだけめざましいということであろう。実際,特集を読むと,この5年間に新たに報告された抗体,抗体の病因性がより確実にされた抗体,治療に直結するようになった例も増えている。また抗体を切り口にした疾患分類が進んだ疾患群もある。認識抗原の詳細が明らかにされ,臨床像との対応が明らかにされたものもある。そうした進歩は抗体検索や抗体機能検出において洗練された技術の導入によるものがあるが,何と言っても患者さんの診断,病態解明,治療に直結したいと願う医師の熱意の賜が根底にあることは間違いない。
特集を概観すると,自己免疫性の脳炎・脳症,大脳基底核障害,視神経脊髄炎,小脳障害,末梢神経疾患,自律神経節障害,神経筋接合部疾患,筋疾患,傍腫瘍性神経症候群と障害部位が実に多彩であり,症候の切り口からみれば,従来免疫性疾患とは縁遠いと思われた,認知症,てんかん,精神疾患なども,少なくともその一部は免疫介在性の機序で生じているということになる。
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