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書評 「『BRAIN and NERVE』2017年11月号増大特集 こころの時間学の未来」
梅田 聡
1
1慶大・心理学
pp.459
発行日 2018年4月1日
Published Date 2018/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201018
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『BRAIN and NERVE』誌2017年11月号に「こころの時間学の未来」というタイトルの増大特集が掲載された。「こころの時間学」とは,2013〜2017年度までの5年にわたる科研費新学術領域研究〔代表:北澤茂(阪大教授)〕の名称であり,この特集号は,その領域研究における成果の集大成の一部としてまとめられている。
「時間とは何か」という概念的な問いに対する論考は,主に哲学の文献に数多く見出されるが,一方で,これまで科学的な研究対象として「時間」を扱ってきたのは,主に物理学,特に力学の分野であろう。しかしながら,それを主体の中で知覚,認知するメカニズムの科学的探求については,これまで決して目覚ましい発展があったわけではなかったように思われる。その理由は,心理的な側面として「時間」を正確に取り出すことの難しさにあったものと推察される。極論すれば,時間が関与しない知覚・認知処理など存在しないわけであり,あらゆる現象には時間という要素が付帯されてくる。ゆえに,時間のみを取り出そうとしても,他の要素を排除することが困難になってくるのが常である。よって,心理的な意味での時間の謎に迫るためには,時間を多次元的に捉え,その共通要素を炙り出すということが必要になってくる。
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