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書評 「てんかんとその境界領域 鑑別診断のためのガイドブック」—Markus Reuber,Steven Schachter【編】 吉野 相英【監訳】
兼本 浩祐
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1愛知医科大学・精神科学
pp.1290
発行日 2017年11月1日
Published Date 2017/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200906
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どのような分野であれ,その分野についてよく知るには,その分野の境界に位置する対象を知る必要がある。そうでなくては結局は自身が取り組むべき対象の輪郭を鮮明には理解できないからである。そういう意味では臨床てんかん学を志す者にとって,てんかんと同様にてんかんとてんかんではない病態の境界に位置するさまざまの病態を知ることは,まさにてんかんとは何かを知るためには必須であると言える。
本書の内容は極めて多岐にわたっていて,てんかん類似症状としては,失神,心因性発作,パニック発作,めまい,小児の非てんかん性発作エピソードが,てんかんとの境界に位置する疾患群としては片頭痛,一過性脳虚血発作,一過性全健忘,パラソムニアが,てんかん関連症状としてはミオクローヌス,チック,発作性ジスキネジア,てんかん発作の前駆症状が,特異なてんかんの原因としては,自己免疫介在性てんかん,自閉症が,てんかん専門医でなければてんかんとは考えないかもしれない特殊なてんかん症候群として,非けいれん性てんかん発作重積状態,てんかん性脳症が,てんかんに由来する精神症状として発作性爆発,てんかん発作の前駆症状,抑うつ,精神病,パーソナリティ障害が取り上げられている。てんかんのように見えててんかんではない,てんかんのようには見えないがてんかんと深く関連するという実践的なてんかん治療において常に問題となる病態が多岐にわたり博物学的に取り上げられていて,その多彩なにぎにぎしさは,さながらアジアの夜市の出店のようなわくわく感があるが,実際にはその1つ1つの専門性の高さを考えれば,むしろ東急ハンズの売り場のほうに近いのかもしれない。
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