書評
「てんかん鑑別診断学」―Peter W. Kaplan,Robert S. Fisher●編 吉野相英,立澤賢孝●訳
兼子 直
1
1弘前大大学院・神経精神医学
pp.300
発行日 2011年4月1日
Published Date 2011/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100890
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“Imitators of Epilepsy”という書籍の第2版を訳出したのが本書『てんかん鑑別診断学』である。てんかんの約30%では抗てんかん薬で発作が抑制されないが,その中の一部は診断が十分ではなく,非てんかん性発作を抗てんかん薬で治療を試みている可能性がある。あるいはてんかん発作をほかの疾患と誤診し,正しい治療が行われていない場合があることも事実である。これらの原因の一部には,精神科医のてんかん離れで,てんかん発作と症状が類似する精神疾患をてんかんと診断する,あるいは非てんかん性発作に不慣れな神経内科医,小児科医,脳神経外科医がてんかんを鑑別できないことが関連するのであろう。本書はかかる状況克服にとり極めて有益な訳書となった。
概論の部分では非てんかん性発作の脳波所見,てんかん発作とは思えないユニークなてんかん発作,非てんかん性けいれん発作の章が興味深い。「年齢別にみた非てんかん性発作」の編では,「新生児と乳児の非てんかん性発作」や「小児期と思春期にみられる非てんかん性発作」の章で実に多数の鑑別すべき疾患がまとめられている。最近てんかん発症が増加している「老年期にみられる非てんかん性発作」についてもまとまった記載がある。
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