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最近,書店で医学書を眺めていると,“するべきこと”と“してはいけないこと”,それだけが手っ取り早く分かるガイドライン・マニュアルの類いと,疾患単位ごとに病態と治療が詳細にまとめられた重厚な成書に二極化している感がある。長文を読まず最低限のことだけ,スマホ感覚で知っておきたい人種と,深く深く掘り下げたいオタク的な人種に帰因した二極化に思われる。その他に,買っただけで安心し,ほとんど読まず,読んでも拾い読みの私のような中途半端な人種も少なからずいるのだろう。
本書は,私のような中途半端な人種でも,一度眺めてみたら,第1章から読み進んでしまう不思議な本である。具体的な症例呈示が多いからかもしれない。ただし,第1章のWilliam Gowersはてんかん症例として記載されているわけではない。本書の表題が,1907年に出版された“Border-land of Epilepsy”というGowersの著作に由来しているためである。“Border-land of Epilepsy”は誤診されていた症例の臨床経験を基に,てんかんと見誤りやすい周辺疾患を解説した成書である。本書もその系譜を受け継ぎ,50以上の症例が提示されている。症例の具体的な記載により,目の前にいる患者として疾患の理解を深められる。Gowersの著作から100年間のてんかん学の進歩にも対応し,自己免疫介在性てんかん,片頭痛とmigralepsy,小児のてんかん性脳症,自閉症,チック,ならびにてんかん発作の前駆現象においてはてんかん発作の予知に関する取り組みも解説している。併存症としてうつ病,精神病,パーソナリティ障害を取り上げ,アルコールとの関連にも一章を割き,てんかん併発疾患がほとんど網羅されている。
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