書評
「《神経心理学コレクション》ジャクソンの神経心理学」—山鳥 重●著 山鳥 重,河村 満,池田 学●シリーズ編集
兼本 浩祐
1
1愛知医科大学・精神科
pp.294-295
発行日 2015年3月1日
Published Date 2015/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200134
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私が山鳥重先生のお話を直接聞かせていただいた機会は,非常に近い興味・関心を継続して持ってきたこと,神経心理学の層的理解を信奉してきたことを考えれば驚くほど少なく,わずかに2回ばかりである。いずれも今から20年以上も前のことで,私は研修医かレジデントの時で先生が私の発表にコメントしてくださった時のことだったと思う。
最初は保続の発表に関してであったが,2回目は側頭葉てんかんの言語自動症のことについてであった。山鳥先生はその時に,「主体意識から客体意識へとまさに言葉が音を持った言葉として生まれ落ちようとしている瞬間に宙吊りになって固定された状態が再帰性発話だとジャクソンが書いており,実際にそういう実例はてんかん臨床であるのかどうか」といった質問をされた。その時私は質問の背景や意味を良く理解できず,単純に「ないです」と答え,会話はそこで終わりになってしまった。しかし先生のその質問はその後,ずっと私の中に残っていて,自分でジャクソンを読むようになって先生の質問の奥深さを知ることになり,さらにその後の臨床経験の中で,まさにジャクソンの言うような,最初の発作体験の時に言わんとしていたことをその後発作が起こるたびに何十年も繰り返して発語し続ける症例が存在することを何度か確認することになった。
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