書評
「《神経心理学コレクション》ジャクソンの神経心理学」—山鳥 重●著 山鳥 重,河村 満,池田 学●シリーズ編集
松田 実
1
1東北大学大学院・高次機能障害学
pp.212
発行日 2015年2月1日
Published Date 2015/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200114
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私が神経心理学を志したのは,ほぼ同じ時期に出版された山鳥重先生の著作『神経心理学入門』と『脳からみた心』を読んだからである。そのころ,私は大学院で試験管を振って脳卒中患者の脂質代謝異常の研究をしていた。神経心理学や失語症といった領域には以前から興味があり惹き付けられてはいたのだが,その難解さゆえに自分などはとうてい手が付けられない分野だと考えていた。しかし,山鳥先生の2冊の本によって,私の中にくすぶり続けていた神経心理学への思いや興味が一挙に噴き出した気がする。「こんなに面白い分野があるのか」「難解なことをこんなにわかりやすい言葉で説明できるものなのか」と感激し,何度も読み返したのを記憶している。
そのころの私の教室には神経心理学に興味を持つ人はおらず,学問領域としても認められていない雰囲気であった。私は神経心理学的徴候を持つ患者さんを診察できる機会の多い病院に赴任させていただき,学会にもできるだけ何とか演題発表を工面して参加し,学会での山鳥先生の言葉を聞き逃さないようにと必死であった。山鳥先生のおられる病院に押し掛けてカンファレンスに参加させていただき直接の教えを受けることもあった。山鳥先生の発する言葉はいつも適切で簡明でわかりやすく,聞いているものを納得させ感心させる内容であった。
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