現代神経科学の源流・1【新連載】
ジョン・C・エックルス【前編】
伊藤 正男
1
,
酒井 邦嘉
2
,
菊池 雷太
3
1東京大学
2東京大学大学院総合文化研究科
3汐田総合病院神経内科
pp.589-594
発行日 2013年5月1日
Published Date 2013/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101501
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Sir John Carew Eccles(1903-1997)。1903年,オーストラリアのメルボルンに生まれる。1925年,メルボルン大学医学部卒業後に渡英し,オックスフォード大学において,脊髄反射学の創始者で「シナプス」の命名でも有名なチャールズ・シェリントンのもとで学ぶ。1937年にシドニー病院の兼松記念病理学研究所所長(1937-1943),ニュージーランドのオタゴ医科大学教授(1944-1951),オーストラリア国立大学教授(1952-1966)を歴任する。その後米国に渡り,シカゴの米国医師会研究所員,バッファローのニューヨーク州立大学教授を歴任後,引退してスイスに居を移し,文筆活動と講演活動に励んだ。脳・脊随の神経機序を研究テーマとし,神経細胞間のシナプス接続に抑制性のものがあることを発見した功績により,1963年ノーベル医学生理学賞を受賞した(同賞はエックルスの師シェリントンも1932年に受賞している)。複雑な脳・脊髄の神経機序を神経細胞のレベルにおいて解明しようとする神経生理学の開拓者であり,現代の神経生理学の源流に位置する人物といえる。生理学での功績のほか,「脳と心」の問題に深い関心を持っており,1977年に哲学者カール・ポパーとの共著で『自我と脳』を出版した。来日歴5回。1986年11月,多くの日本人研究者を育成した功績により,勲二等旭日重光賞を受賞している。1997年5月2日,スイスのテネロ=コントラにて死去。
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.