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アンドレ-トーマ(André-Thomas;1867-1963)はパリで生まれ,一生をパリで過ごした。彼は3つの戦争を経験したと常々いっていたが,普仏戦争,第一次世界大戦,第二次世界大戦の3つを経験した神経学者はそうはいないだろう。96歳で亡くなったが,最後まで臨床,特に小児神経学の臨床を行っていたことで有名である。アンドレ-トーマはファーストネームとファミリーネームをハイフンで結んでいるが,アンドレ-トーマが論文を執筆し始めた頃に同姓同名の生理学者がいたらしい。それとの混同を防ぐために,一生をハイフン付きの名前で過ごしたといわれている。
彼はデジュリーヌ(Joseph Jules Dejerine;1849-1917)の弟子として神経学の勉強を始めたが,教授資格試験に落ちたのでサルペトリエール病院にいることはできず,私立のサン・ジョセフ病院の外来勤務医として1901年から1932年まで勤めた。1932年に定年となり,そのポジションを譲るようにいわれたが,外来の片隅で患者を診ることは許された。アンドレ-トーマの著作は30歳で小脳について出版したのを皮切りに,その後はとうとうと淀みなく死に至るまで続いた。単著で『小脳――解剖学的・臨床的・生理学的研究』1)(1897年,356頁),『発汗運動反射』(1921年,vii+242頁),『平衡と平衡取得』(1940年,567頁)を執筆したほか,デジュリーヌとの共著『脊髄疾患』(1902年,470頁,第2版:1909年,839頁),弟子との共著『小脳の局在』2)(1914年,197頁),『体軸』(1948年,538頁),『新生児と乳幼児の神経学的研究』(1952年,434頁),『胎児から生後の運動について』(1963年,vi+165頁)など,いずれも堂々たる書物である。
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