ポートレイト
サロモン・ハキム―正常圧水頭症への功績
稲富 雄一郎
1
1済生会熊本病院脳卒中センター神経内科
pp.1075-1078
発行日 2012年9月1日
Published Date 2012/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101299
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はじめに
多くの水頭症では頭蓋内圧が上昇している。しかし水頭症の中に,頭蓋内圧が正常である一群が存在する。そのような一群,すなわち正常圧水頭症(normal pressure hydrocephalus:NPH)は,いわゆる三徴と称される歩行障害,認知症,排尿障害をきたし,画像上脳室の拡大を呈する症候群である。
しかし本症候群が認知され,その患者にシャント手術という福音がもたらされるためには,一人の傑出した医師の登場が不可欠であった。本稿ではこの正常圧水頭症の病態解明,さらにその最も重要な治療法であるシャント術の開発に多大な功績を残した脳神経外科医,サロモン・ハキム(Salomón Hakim)の生涯を紹介する。
なお,本稿は文献1)に挙げたWallensteinの論文に負うところが大である。同論文引用(本稿ではその箇所の提示は割愛する),および拙著出版に際しては,出版社Wolters Kluwer社と筆頭著者Matthew B. Wallensteinの承諾を得た。このWallenstein論文はハキムをはじめ主要な関係者へのインタビューも含め,実に痛快この上ない内容であり,是非一読をお勧めする。
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