書評
「神経内科ハンドブック 第4版 鑑別診断と治療」―水野美邦●編
高橋 良輔
1
1京大大学院・臨床神経学
pp.97
発行日 2012年1月1日
Published Date 2012/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101107
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神経内科ハンドブックの初版は1987年4月に発行された。ちょうど私は卒後5年目で神経内科専門医(当時は認定医)試験受験の直前であった。コンパクトでありながら,読みやすい文章で多くの情報が無駄なく偏りなく取り上げられており,短時日で読みとおしてしまった。試験に役立ったのはいうまでもないが,それよりもベッドサイドでこれほど実践的な教科書はこれまでなかったのではないかという強い印象を受けた。最も目を瞠ったのは,編集者の水野美邦先生ご自身が執筆され,第4版でもそのエッセンスは変わっていない神経学的診察法と局所診断の項目であった。臨床に有用な神経解剖・神経生理の記載が充実しているだけでなく,初心者にやさしく語りかけるようなアドバイスも書き込まれている。例えば局所診断の章の最初に掲げられている「経験者は複雑な症候の患者をみても,すぐどの辺りに障害があるか見当がつくが,初心者は末梢から順に考えていくとよい」という金言は,後に水野先生の病棟回診を見学する機会を得て,難しい症例に関しては水野先生ご自身がそのとおり実践されているのを目の当たりにすることができた。
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