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ベッドサイドでも使いやすい実践的な教科書
神経内科ハンドブックの初版は1987年4月に発行された。ちょうど私は卒後5年目で神経内科専門医(当時は認定医)試験受験の直前であった。コンパクトでありながら,読みやすい文章で多くの情報がむだなく偏りなく取り上げられており,短時日で読みとおしてしまった。試験に役立ったのは言うまでもないが,それよりもベッドサイドでこれほど実践的な教科書はこれまでなかったのではないかという強い印象を受けた。最も目を瞠ったのは,編集者の水野美邦先生ご自身が執筆され,第4版でもそのエッセンスは変わっていない神経学的診察法と局所診断の項目であった。臨床に有用な神経解剖・神経生理の記載が充実しているだけでなく,初心者にやさしく語りかけるようなアドバイスも書き込まれている。たとえば局所診断の章の最初に掲げられている「経験者は複雑な症候の患者を見ても,すぐどの辺りに障害があるか見当がつくが,初心者は末梢から順に考えていくとよい」という金言は,後に水野先生の病棟回診を見学する機会を得て,難しい症例に関しては水野先生ご自身がその通り実践されているのを目の当たりにすることができた。
初版の序文に書かれている「卒業後比較的年月が浅く,熱意に燃えて臨床研修を行っている方々に読んでいただきたい」という意図は十分達せられ,多くの読者の支持を得て版を重ね,このたびの第4版発行に至った。第4版から新規に追加された点を列挙してみると,3章「症候から鑑別診断へ」に,「3.睡眠障害」「16.排尿排便障害・性機能障害」を追加,5章「診断と治療」の「5.炎症性疾患」を「6.感染症疾患」「7.自己免疫性疾患」に分割,「15.神経筋接合部疾患」を「13.筋疾患」から独立させてある。また6章「基本的治療法・手技」に,「4.公的支援制度」を新しく設けてあり,わが国の神経内科医が患者の助けになるうえで必要な基本事項はすべて盛り込まれていると言ってよい。
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