書評
―水野美邦 編―神経内科ハンドブック(第4版)―鑑別診断と治療
栗原 照幸
1
1東邦大学神経内科
pp.727
発行日 2010年7月15日
Published Date 2010/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101671
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水野美邦先生は,1969年から4年間Chicago, Northwestern大学で神経内科レジデントを体験され,帰朝後それを1冊の本にまとめておきたいという希望から神経内科ハンドブック第1版として1987年に出版された。版を重ねて第4版となり,34名の執筆者によって,最近の知見を盛り込んで2010年3月に出版された。アメリカの神経内科レジデント教育では,成人の神経内科のほか,一定期間ずつ小児神経内科,脳神経外科,精神科,神経放射線,脳波・筋電図,神経病理のローテーションが組まれ,all roundな臨床能力を能率よく3年間で体得できるようプログラムが組まれている。
神経系はその解剖学的な複雑さから,とっつきにくいと考えられるが,問診をして,発症の仕方(突発性,急性,亜急性,慢性進行性,寛解・増悪の繰り返し等)や病気の経過,家族歴の有無,仕事や環境との関連性などよく話を聞いて,次に神経診察を取り落としなくすると,①主に問診からどのような病態か(血管障害,炎症,代謝・中毒,腫瘍,変性,脱髄),②神経診察所見から神経系の疾患部位を8割がた,明らかにすることができる。問診と診察所見から最も考えられる診断を思いついた後に,多くの鑑別診断も思い浮かべて,神経学的検査法の助けも含めて,最終診断に至るが,この本の副題にもなっている鑑別診断の重要性を編者はよく強調している。図や写真も多く,まとめの表も理解しやすい。重要な参考文献が読書を深めるために十分すぎるほど記載され,最新情報が盛り込まれている。
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