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はじめに
厚生労働省の統計によれば,2007年の脳卒中死亡率は人口10万人あたり100.8人で悪性新生物,心疾患に次いで第3位であるが1),入院治療に要する期間は81~123日と長く,心疾患やがんの3倍以上の入院期間を必要とする。さらに入院治療を終了して自宅に退院しても,片麻痺が残存し歩行や日常生活になんらかの支援が必要であることも稀ではない。『平成19年国民生活基礎調査』によれば,介護が必要になった原因の第1位は脳卒中で23.3%であり,介護保険の要介護度1~5の中で27.3%は脳卒中が原因であった2)。脳卒中など中枢神経に傷害を生じて四肢に運動麻痺を生じる疾患は国民の生活に重大な影響を与える。
脳卒中によって知的障害,言語障害,認知障害,運動麻痺,感覚障害などさまざまな機能障害を生じるが,片麻痺による上下肢の痙性麻痺は最も重要なリハビリテーション(以下,リハ)課題である。片麻痺患者の運動回復は,脳神経内科医あるいは脳神経外科医による専門的な治療が必要であることは言うまでもないが,早期から十分なリハ訓練を実施することが重要である3)。一般に,上肢機能障害は集中的訓練によって改善は得られるものの麻痺が残存することが多く,補助的な使用に限定されるかまたは廃用手となり,日常生活では非麻痺側上肢による機能代償を余儀なくされることも多い。一方,下肢機能障害は訓練によってある程度の改善が得られ,杖や補装具を用いて移動能力を再獲得できることが多い。
Kwakkelら4)の無作為化比較試験によれば,1日30分1週5日に運動訓練を増加させると上肢では対照群に比較して有意に巧緻性が向上し,下肢では日常生活動作と歩行機能が有意に改善した。この結果は日常臨床の成果を適切に説明しており,早期から専門的で集中的なリハ訓練を実施することの重要性を示唆しているが,麻痺側上下肢の運動障害に対する治療は依然として未解決の重要課題である。
近年,上肢訓練に対しては課題に特異的で,目的を持った反復訓練である麻痺側上肢強制使用療法(constrained-induced movement therapy)5),ロボット支援訓練6),下肢に対しては体幹を懸垂して部分的に体重を免荷したトレッドミル歩行訓練7,8),ロボット支援歩行訓練9)が報告された。限られた医療費の中で,理学療法士や作業療法士が急性期,回復期,維持期にわたりすべての脳卒中患者に十分量の人対人のリハ訓練を実施するのは非現実的であり,これらの新しい試みが治療効果の向上や訓練期間の短縮ばかりではなく,十分なリハ訓練量確保に役立つと考えられる。そこで本稿では,上肢および下肢のロボット訓練と自験例に関して概要を報告し,リハ訓練領域の新しい展開を期待する。
Abstract
Recently,new training techniques that involve the use of robots have been used in the rehabilitation of patients with hemiplegia and paraplegia. Robots used for training the arm include the MIT-MANUS,Arm Trainer,mirror-image motion enabler (MIME) robot,and the assisted rehabilitation and measurement (ARM) Guide. Robots that are used for lower-limb training are the Rehabot,Gait Trainer,Lokomat,LOPES Exoskeleton Robot,and Gait Assist Robot. Robot-aided therapy has enabled the functional training of the arm and the lower limbs in an effective,easy,and comfortable manner. Therefore,with this type of therapy,the patients can repeatedly undergo sufficient and accurate training for a prolonged period. However,evidence of the benefits of robot-aided training has not yet been established.
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