Japanese
English
連載 神経学を作った100冊(15)
チャールス・ベル「絵画における表情の解剖論」(1806)
One Hundred Books which Built up Neurology (15)―Charles Bell: Essays on the Anatomy of Expression in Painting (1806)
作田 学
1
1日本赤十字社医療センター神経内科
1Department of Neurology, Japanese Red Cross Medical Center
pp.298-299
発行日 2008年3月1日
Published Date 2008/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100249
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
チャールス・ダーウィンの「人間および動物の表情」(1872)の記載が素晴らしいことを豊倉康夫先生からお聞きし,私はそれ以後十数回読み直した。この書物は「種の起源」を補強する意味で書かれたことは言うまでもないが,主として3冊の先行図書を批判あるいは引用する形で成立している。その第1のものは,ここで挙げるチャールス・ベル(1774~1842)の「絵画における表情の解剖論」(1806年)である。
この本には顔面筋の解剖と生理およびその表情との関連についての詳細が,ベル自身の手による美しい図版を用いて説明されている(Fig.1)1)。そして,強く閉眼すると眼球が奥へ押し下げられること(p.60)や,表情筋は収縮によってだけではなく弛緩によっても表情を表出することがあること(p.99),などの今日でも重要な観察がもられている。また,表情筋の解剖(Fig.2),死の表情(Fig.3),痛みの表情(Fig.4)など多くの図が記載されている。このほかにも犬や馬の顔面筋の解剖とその表情についても美しい図が載っている。この第2版は1824年にMurray社から4折版218頁で出版された2)。さらに第3版は1842年4月29日のベルの死後,1844年に出された3)。第3版は上述のように初版と比べるとタイトルも異なっているが,全体にしっかりとした構成を持った,体系的な記述に変えられている。この改訂の大部分はベルが1840年にイタリアを旅行し,当地の多数の絵画を研究した後に自ら行ったものである。そして,1877年に第7版を出し,終わっている4)。息の長い書物といえよう。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.