展望
絵画療法
関 昌家
1
1花園病院
pp.333-337
発行日 1971年10月9日
Published Date 1971/10/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100473
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はじめに
精神障害者の絵については,これまでにも精神病理学的な面から創造性,表現,色彩の異常さなどの多くの研究がありますが,精神科における作業療法のactivityとしても,非常に有用であり,絵画により患者の精神内界の複雑さ,患者の状態の変化を視覚的にとらえやすいため,今後,ますます多く用いられるものと思います.
具体的に,絵画を考えた場合,ひとつの特徴が考えられますが,それは,患者の作品を通じて,作業療法士が患者と共感的な感情の交流を持つことが可能になり,それは,ことばだけに限られたものでなく,作品としての絵を通して,視覚的にも認め合える,ひとつの客観性を持っております.同時に,作品は患者の心の動きを一部分ではあるが,私たちに知らせてくれます.
図1は,ふだんは興奮しやすく,早口にしゃべり,会話が聞き取りにくい女子患者が描いた絵ですが,赤,黄,青,灰色の4色を使って,画用紙を塗り分け,その中に黒で4つ葉のクローバ,チューリップ,自分の家を描き,4つ葉のクローバは自分が幸福になれるようにと思い,花は自分が好きだから,家は退院して帰りたいからと説明しております.
図2は,分裂病男子が‘木’というテーマで描いたものですが,この患者は,日常動作は緩慢で,OT室でも静かに黙々と絵を描いていますが,絵は非常に緊張して,不安で,攻撃性が感じられ,患者の表面的な態度と,内面活動の違いをまざまざと見せつけております.このように,患者の描く絵は非常に内容に富み,レクリエーションとして描かせるのではなく,作業のactivityとして用いた場合,より大きな意義を持つように思います.
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