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褐色脂肪組織(brown adipose tissue : BAT)は,哺乳類で見つかった脂肪組織の一つです.新生児や冬眠動物では特に豊富で,動物や新生児が体を震わせないで体の熱を生成すること(非ふるえ熱産生)ができるのはこの脂肪組織によります.BATは,数多のミトコンドリアを含んでおり,白色脂肪組織から遊離した脂肪酸を取り込みエネルギーを燃焼させ熱を生産します.BATは成長とともに減少しますが,成人にも首・肩甲骨の周囲などに若干存在しており,寒冷刺激により糖の取り込みを増加させてエネルギー消費(=非ふるえ熱産生)を増加させます.また,肥満や加齢,糖尿病はBAT活性を低下させます.一方で,48〜60時間の長時間にわたる空腹状態は主に骨格筋での糖取り込みが低下し,インスリン抵抗性(insulin resistance : IR)が誘導されることが報告されています.しかし,このようなIR状態でBATでの糖取り込みがどうなるのかは不明でした.著者らは,IR下において寒冷刺激がBATでの糖取り込みを増加させるのであれば,BATが2型糖尿病などのIRにおける血糖降下の標的として期待できるかもしれないと期待して,本研究を行いました.
対象は,運動習慣のない健康な男女16名(男8名,平均年齢22±3.1歳,BMI 21.3±1.5kg/m2).ベースラインデータとして,一晩の絶食ののち二重エネルギーX線吸収法により体組成を測定.次に,ふるえが起こる直前まで30分間寒冷刺激に曝露して非ふるえ熱産生を誘導,呼気ガス分析による間接熱測定法によりエネルギー消費量(energy expenditure : EE)を,経口測定器により深部体温,皮膚体温を,[18F]FDG-PET/CTによりBATの活性を測定.また,同対象者にあらかじめ3日間の絶食ののち同プロトコルで計測を行い,空腹(IR)時データとしました.
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