特集 思春期を支える公衆衛生
思春期保健の新たな視点—問題行動の予防のために
高橋 象二郎
1
1東京都立多摩総合精神保健福祉センター
pp.462-465
発行日 1999年7月15日
Published Date 1999/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902105
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思春期精神保健の問題を公衆衛生的(1次予防的)立場から論ずることには,相当困難が伴うものである.その理由の一つは,これまで精神保健の分野はメンタルヘルスの視点を欠いていたという点にあるだろう.つまり,個人を中心に置いたアプローチが主で,集団の心,特に思春期の健康はほとんど排除されてきたからである.方法論についても,予防的な方法論そのものが確立されておらず,新たな視点を見いだす段階には至っていない.さらにこれに追い打ちをかけるように,近年は診断困難例と言われるような症例が増加している.そして,不登校,自殺,薬物依存といった問題が大きな社会問題になってきている.
しかし,思春期の精神保健の予防的活動は,若者の発病がもたらす経済的損失の大きさという意味からも早急な対策を講じる必要に迫られている.最近のいわゆる「キレる子」現象は,極端な攻撃性の発露が社会全体の攻撃性を反映しているという視点からも地域集団全体の精神保健対策を求めていく必要があるだろう.また,薬物関連行動をみると,学校だけでなく社会のシステムに影響を受けた,様々な要因が関与しており,その責任は学校から地域社会全体へと広がっていると考えられるだろう.
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