増刊号特集 Brush Up! CDE 糖尿病合併症事典
Ⅲ急性合併症
高浸透圧高血糖症候群
伊藤 新
1
,
目黒 周
1
1慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科
キーワード:
①2型糖尿病
,
②脱水
,
③高浸透圧
,
④高血糖
Keyword:
①2型糖尿病
,
②脱水
,
③高浸透圧
,
④高血糖
pp.320-322
発行日 2014年4月15日
Published Date 2014/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415101719
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症例 75歳 女性
病歴55年の2型糖尿病で,15年前よりインスリン治療を行っていた.両側増殖網膜症あり(汎光凝固療法施行後),腎症なし,神経障害なし.7年前に家業の経営が悪化したのを契機にうつ病を発症し,SSRIやSNRIなどの抗うつ薬による治療が開始されるも症状が改善せず,電気痙攣療法をこれまでに数回受け,緩解・増悪を繰り返していた.
1カ月前よりうつ病の再増悪により意欲低下・食欲低下が出現し,インスリン自己注射も拒否するようになったものの,家人の話によると,「多尿,口渇,多飲といった高血糖症状を訴えてはいなかった」とのことであった.
同年6月に電気痙攣療法を受けるために当院精神科に入院したところ,JCS 1の意識障害,血糖値1,526mg/dL,HbA1c 12.0%の高血糖に加えて,皮膚turgor低下,BUN 188.8mg/dL,Cr 5.83mg/dL,Na 138mEq/L,K 7.9mEq/L,ヘマトクリット52.7%,FENa(Na排泄分画)3.6%と,腎前性腎不全を伴う著明な脱水所見を認めた.尿ケトン体は陰性であった.血漿浸透圧は428mOsm/Lであり,高浸透圧高血糖症候群(HHS)と診断して当科による加療を開始した.
生理食塩水による補液とインスリン持続静注により速やかに血糖値の低下と脱水の改善を認め,第3病日より食事を開始し,定時のインスリン皮下注射も再開して退院となった.
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