特別企画 Master's Case File◆心に残った症例
中断を繰り返す理由
山本 壽一
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1社会医療法人かりゆし会ハートライフクリニック
キーワード:
治療中断
,
双極Ⅱ型障害
,
奉仕願望
Keyword:
治療中断
,
双極Ⅱ型障害
,
奉仕願望
pp.436-438
発行日 2013年5月15日
Published Date 2013/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415101539
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症例の紹介
通院と中断を繰り返す患者さんを経験したことがありませんか.60歳半ばのNさんはそんな女性でした.10年前に健康診断で糖尿病と診断されて初めて私の外来を受診したときは,下を向いたままで視線も合わさず,質問には付き添いの娘さんが答えました.ここ数年は自宅からほとんど出ることはなく,スナック菓子の間食を頻回にしていたこと,喉が渇いたと牛乳を水代わりに飲んでいたことが,娘さんからの情報で明らかになりました.その間に体重は10kg以上増加していました.初診時の検査結果はHbA1c(以下NGSP)7.8%と高く,治療としては管理栄養士から1,300kcalの食事療法を指導し,1カ月後の再診を予約して帰宅となりました.ところが,Nさんが次に受診したのは6カ月後でした.この時も娘さんは付き添っていましたが,Nさん自身から体がだるいことや体重が減ってきたこと,そして入院して治療したいことが訴えられました.娘さんからは,夜も眠らずに夫を相手に一晩中でも話し続けていると報告されました.この時のHbA1cは11%と高値で,入院での治療と糖尿病教育コースを受講してもらうこととなりました.
入院中のNさんは,とても積極的に教育コースを受講し,自らも勉強して他の患者さんがわからないところはスタッフに代わって教えていました.Nさんは高血糖改善のためインスリン治療を自ら望まれ,導入となりました.血糖測定も1日4回実施して,運動療法も率先して行いました.幸いなことに合併症はなく,血糖値も急速に回復して退院となりました.退院の時には,私も含めてスタッフ皆に熱烈な感謝の手紙をくださいました.
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