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「糖尿病」という多様性に富んだ疾患の治療において血糖の厳格な管理が細小血管障害の発症・進展を抑止するうえで極めて重要であることを科学的に示したのは,1,441人の1型糖尿病患者を対象としたDCCT(Diabetes Control and Complications Trial)です.UKPDS(UK Prospective Diabetes Study)は2型糖尿病患者において薬物による血糖管理の有用性を示した成績ですが,薬物介入を行った群の10年間にわたる平均HbA1c値が7.1%,食事指導のみで糖尿病の症状がなく,空腹時血糖値が15.0 mmol/L(270 mg/dL)未満であれば薬物の介入をしない群(約70%は経過中に薬剤による介入が行われていますが…)のHbA1cが7.9%で,わずか0.8%の差でしかなかったことは糖尿病治療の難しさを浮き彫りにしています.
血糖のさらなる厳格な管理,HbA1c値6.0%以下を目標として虚血性心疾患の発症・進展の抑止を目指したACCORD(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes),ADVANCE(Action in Diabetes and Vascular Disease),VADT(Veterans Affair Diabetes Trial)では,血糖の厳格な管理を目指しても大血管障害は抑止しえないことが確認されました.介入期間が5年程度と短期間であったこと,糖尿病の罹病期間が長く血糖管理が不十分であった糖尿病患者では血糖管理の有用性が低いことなどがその理由としてあげられています.しかし,HbA1c<6.0%を目指した強化療法群では7.0≦HbA1c≦7.9%を目指す標準治療群と比較して総死亡がハザード比(HR)で1.22(95%信頼区間:1.01~1.46),心血管死のハザード比(HR)が1.35(95%信頼区間:1.04~1.76)であったというACCORDの成績は,やみくもに厳格な血糖管理を是とするトレンドに歯止めをかけることになりました.
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