Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Case
第4期で紹介され,その後腎不全の進展で透析導入を要した2型糖尿病例
患者:52歳,男性,会社員.
既往歴:特記すべきことなし.
家族歴:父;高血圧,狭心症.
現病歴:1998年検診で尿糖を指摘された.2型糖尿病と診断されスルホニル尿素薬(オイグルコン)2.5 mgを処方され,糖尿病網膜症に対しレーザー治療が行われた.
2001年上京し以後自己判断で内服中止していた.同年12月,足に水泡ができ近医を受診.FBS 326 mg/dL,HbA1C 9.2%,血圧160/90 mmHg,尿素窒素(UN)33 mg/dL,Creatinine(Cr)2.0 mg/dL,尿蛋白(2+)と高血糖,高血圧,腎機能障害を指摘され他院に入院.糖尿病に対してはインスリン療法(ペンフィル30 R朝10 E,夕4 E),高血圧にはノルバスク5 mgが投与開始された.以後外来通院となりHbA1C 7.0~7.5%であった.徐々に腎機能が低下し浮腫も出現.2003年1月腎不全の加療目的で当院紹介入院となった.
身体所見:身長170 cm,体重:85.5 kg(BMI 29.2 kg/m2),血圧166/90 mmHg,脈拍78/分整,下腿浮腫著明,深部腱反射の低下を認める.
検査所見:TP 5.8 g/dL,UN 82 mg/dL,Cr 5.9 g/dL,Na 139 mEq/L,K 5.4 mEq/L,Ca 7.4 mg/dL,P 6.0 mg/dL.Hb 8.4 g/dL,Ht 25.9%,血液ガスpH 7.32,HCO3 20 mmol/L.空腹時血糖89 mg/dL,HbA1C 6.2%,尿蛋白(4+)10.5 g/日,尿潜血(-),尿中UN 10.2 g/日,尿中Na 192 mEq/日,Ccr(creatinine clearance)11.2 mL/分.一日蓄尿の結果より算出した摂取蛋白(推定)は80 g,塩分摂取量(推定)は11 g/日で共に過剰摂取の状態であった.
眼底は増殖性網膜症,レーザー治療後の状態.心電図は安静,運動負荷共に異常所見を認めなかった.胸部X線では異常所見を認めなかった.腹部超音波では腎の大きさは保たれており皮質エコー輝度の上昇を認めた.糖尿病腎症の病期は既に第4期に達し,末期腎不全の状態であった.蛋白尿も高度でネフローゼ症候群を呈しており,下腿浮腫は著明であった.
入院後の経過:空腹時血糖では70 mg/dL台が持続し,食後血糖も90~120 mg/dLと,低血糖傾向が認められたためインスリンを減量.空腹時血糖104 mg/dL,食後血糖150~170 mg/dLに管理した.
食事療法としては浮腫も認めたため1,800 kcal,NaCl 5 g,蛋白40 g/日,水分1,000 mLで塩分,蛋白,水分制限を導入した.
薬物療法としては,腎不全に対してクレメジン6 gを開始.高血圧にはディオバン80 mgを開始し血圧124/76 mmHgと管理.高K血症の増悪は認めなかった.浮腫に対しラシックス40 mg内服開始し,体重は入院時85.5 kgより退院時77.5 kgまで減少し,浮腫も消失した.
腎性貧血に対してはエポジン6,000 E/W皮下注を行いHt 25.9%から30.9%まで上昇し退院とした.退院時UN 67 mg/dL,Cre 5.9 mg/dLであった.以後外来での通院中の血圧管理は166/90 mmHg前後と管理は不良,徐々に腎機能は低下し,2003年8月UN 133 mg/dL,Cre 9.9 mg/dL,外来時でのUN/Cr値は1.0以上であり,蛋白制限は遵守されていないと推察される.外来時受診時の24時間尿の尿中UN,Naから算出すると本例での蛋白摂取量は80 g/日,食塩摂取量は11 g/日であった.Ht 24.9%であり腎不全保存期管理の継続が困難と判断し,シャント造設後に血液透析を導入した.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.