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特集の締めくくりに「エビデンスとプラクティス」の狭間に悩んだ症例を検討し,エビデンスづくりの難しさや久山町研究の最近のデータを清原先生にお尋ねします.
症例(Box 1)
吉岡(司会) 57歳の男性,肥満2型糖尿病で,インスリンと経口薬を併用しており,混合製剤とNPHと速効型インスリンを組み合わせて100単位以上も使用されています.
この方は狭心症の症状はあったのですか?
細井 症状があって,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)をされております.その後はなんとか再発なしにきています.
私自身が気にしていますのは,これだけの肥満の方に,これだけのインスリンを使ってよけいに肥満を助長しないかということと,よくいわれますようにインスリンを使うことによってマイクロアンギオパチーをよけいに進めるのではないかということを危惧しております.
ただ,なんといっても腎症がクレアチニン2.0mg/dLのレベルですので,なんとか腎症の進行を防ぎたいというのが第一です.下に,クレアチニンのレベルと尿蛋白の外来でのレベルをプロットしてみました.
私としては,インスリンを大量に使ってでも,血糖レベルを下げれば蛋白尿もなんとか進行を抑えられるのではないかと,いま,自己満足しているのですが,うちの科のほかの先生から,「そんな投与法でいいのか?」と言われています.インスリンを減らすのに,いまアマリール(R)を0.5mg使っているんですけれども,その0.5mgに意味があるのかとも言われています.あるいは,この方は腎不全でメトホルミンが使えませんので,むしろアクトス(R)みたいなものを使ったほうがいいんじゃないかということを,最近のエビデンスから言われているのですが,私自身は,いまのところインスリン大量で押しているという感じ,力ずくで下げているという感じです.これがいいのかどうか,毎月,患者さんが来られるたびに悩んでいる症例です.
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