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糖尿病は他の危険因子を合併しやすく,高血圧と並んで脳梗塞の重要な危険因子である.
糖尿病は,細小血管障害および大血管障害の合併症を引き起こして,さまざまな身体機能や知的機能に障害を残す.近年わが国では,生活習慣の欧米化に伴って肥満や高脂血症とともに糖尿病が急速に増加し,大きな課題となりつつある.一方,日本人は脳卒中のリスクが高いことが知られている.脳卒中はその発生機序によりいくつかの病型に分けられるが,最近の日本人ではその約7割を脳梗塞が占めている.脳梗塞は加齢とともに増えることから,高齢人口が急増しているわが国では,脳梗塞患者の増加が憂慮されるようになった.したがって,わが国では,糖尿病とともにその代表的な合併症である脳梗塞の現状を把握しその予防対策を講じることは,最も重要な国民的な課題といえよう.そこで本稿では,福岡県久山町において長年にわたり継続中の疫学調査(久山町研究)の成績を中心に,地域住民における糖尿病と脳梗塞の関係について分析し,その現状に触れる.
久山町における疫学調査
久山町は,福岡市の東に隣接する人口約7,500人の小さな町である.その人口・職業構成は日本全国の平均レベルにあり,住民は偏りの小さい典型的な日本人の集団といえる.この町では,1961年,1974年,1988年の循環器健診を受けた40歳以上の住民からそれぞれ第1集団(1,618名),第2集団(2,038名),第3集団(2,673名)を創設し,ほぼ同じ方法で追跡している.いずれの集団も受診率は80%を越え,各集団の脱落例は2名以下と徹底した追跡調査がなされている.さらに,各集団の死亡例の80%近くを剖検し,その死因や隠れた疾病の有無を詳細に検討している.本稿では,主に最近の第3集団の成績を中心に話を進めたい.
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