Book Review
高齢者がん治療エビデンス & プラクティス
石岡 千加史
1
1東北大学大学院医学系研究科臨床腫瘍学分野 教授
pp.475-475
発行日 2022年3月1日
Published Date 2022/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika129_475
- 販売していません
- 文献概要
日本人の悪性腫瘍(がん)による年齢調整罹患率および死亡率は年々減少傾向であるが,粗死亡率でみると死因の第1位は1981年以降「がん」であり,現在も上昇傾向にある.これは罹患率が高い高齢者の人口に占める割合(高齢化率)が年々高くなっていることに起因する.「がん」が医学的にはもとより社会的にも高齢者疾患であるといわれるゆえんである.このため,がん診療に携わる医療従事者には医学とりわけ疫学や生理学的な高齢者の側面と,社会学的な側面を理解する必要がある.臓器別「がん」の診療にあたっては学会が作成する診療ガイドラインが標準医療を実践するうえで重要な指標になるが,このような高齢者の医学的,社会学的な特性を加味した指針にはなっておらず,現場の医療従事者の裁量に任せられるケースがほとんどであった.そこで新しい学術領域として老年腫瘍学分野が注目されるようになり,最近では『高齢者のがん薬物療法ガイドライン』が策定されるなど,老年腫瘍学分野の必要性とその理解が徐々に浸透してきた.
© Nankodo Co., Ltd., 2022