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虚血性心疾患は糖尿病患者の生命予後に直接影響する重大合併症である.糖尿病・耐糖能障害患者の心血管疾患発症率は,そうでない者の2~4倍高いとされる.1996年に開始されたJapan Diabetes Complications Study(JDCS)は,日本人2型糖尿病患者を対象にした多施設共同大規模臨床研究で,全国59カ所の糖尿病専門施設に通院する患者2,205名を前向きに追跡調査している1).その9年次中間発表によると,患者1,000人あたりの虚血性心疾患(心筋梗塞と狭心症)の年間発症率は8.9(男10.7女6.8)となっており,一般住民(久山町研究2))の約3倍高率であった(Box 1).一般住民にも糖尿病または耐糖能障害者が含まれるので,両者のリスクの差は実際にはもっと大きい.わが国では従来から冠動脈疾患より脳卒中の発症率が高いことが知られるが,JDCS登録者ではそれが逆転しており,日本人でも糖尿病患者は欧米的な冠動脈疾患優位型へ移行していることがうかがわれる.ただし絶対発症率では,英国人2型糖尿病患者〔United Kingdom Prospective Diabetes Study(UKPDS)における対照群〕3)の約半分であった(Box 1).糖尿病患者の虚血性心疾患を抑制するためには,血糖,血清脂質,血圧のすべてについて強力なコントロールを初期から行う必要がある.
JDCS登録患者における虚血性心疾患のリスクファクターをBox 2に示した.年齢・性以外の最も強いリスクファクターはLDLコレステロール,次いでトリグリセリドである.JDCSにおける虚血性心疾患発症リスクとHbA1CまたはLDLコレステロールとの関係をBox 2に示した.LDLコレステロールの上昇は,HbA1Cの上昇と同等以上に虚血性心疾患リスクを高めることがわかる.JDCSでは,肥満度4,5)などの病態背景とともに,アルコール摂取6)やメタボリックシンドローム7,8)が大血管合併症発症に及ぼす影響が,日本人糖尿病患者と欧米人糖尿病患者とで異なることが示されている.これまでの大規模臨床研究は欧米人患者を主体としてきたが,日本人を含む東アジア人糖尿病患者の大規模前向き研究が必要である.
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