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糖尿病はどのくらい心血管疾患のリスクを押し上げるのか
糖尿病は,冠動脈疾患・脳卒中などの心血管疾患(すなわち大血管合併症)の原因疾患としてきわめて重要である.カナダ人における最近の検討1)では,糖尿病は加齢に換算すると15年分に相当するほど,心血管疾患のリスクを上昇させると報告されている.日本人一般住民の冠動脈疾患の絶対発症率は欧米人より低く,これは糖尿病患者にもあてはまるが,非糖尿病患者と比較した糖尿病患者のリスク上昇度は日本人も欧米人も変わらず,およそ2~4倍とされる2,3).また日本人2),欧米人4~6)いずれを対象にした研究においても,前糖尿病状態,耐糖能障害の段階からすでに心血管疾患リスクの上昇が認められる.このように大血管合併症の発症リスクは,細小血管合併症がまだみられないような時期から上昇し始める.したがって大血管障害の予防対策は非常に早期から行う必要がある(Tips 1).
日本の糖尿病大血管障害のエビデンスは
糖尿病合併症には人種差があり7),診療内容を人種ごとに少しずつ変えたほうがよい可能性もある.しかし今のところ,東アジア人糖尿病患者を対象とした疫学・大規模臨床研究が十分でないため,日本人糖尿病患者の診療も,欧米人患者のエビデンスに基づいて行われているのが現状である.1996年から実施されているJapan Diabetes Complications Study(JDCS)は,日本人糖尿病患者のエビデンスを確立することを目的に,全国の糖尿病専門施設に通院する2型糖尿病患者2,205名を登録・追跡している8).日本の一般住民は,欧米人と異なり,冠動脈疾患より脳卒中の発症率が高いことが従来から知られているが,JDCSの中間結果によると,日本人でも糖尿病患者では,冠動脈疾患と脳卒中の発症率が逆転しつつあることが示されている9).
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