連載 海外レポート ニューヨーク州保健省の日常・14
在米日本人の糖尿病リスク
ホスラー 晃子
1,2
Akiko S. Hosler
1,2
1ニューヨーク州保健省慢性病疫学課
2ニューヨーク州立大学公衆衛生大学院
pp.148-150
発行日 2001年2月15日
Published Date 2001/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902460
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
バブル経済の時代に比べるとややその数が減ったとはいえ,ニューヨーク州内に在住する日本人は,約3万人と概算されている.その多くは企業の駐在員とその家族や留学生で,20代から50代の割合が他の世代に比べて多い.地理上の分布をみると,ニューヨーク市とその周辺に日本人人口が集中しているのがわかるが,州の北部や西部でも,都市や大学のある町を中心に,日本人の浸透が見られる.ところで公衆衛生に従事する筆者としては,こうしたアメリカに暮らす日本人の健康状態はどのようなものであろうか,という素朴な疑問がうかんでくる.ご存じのように,アメリカは車社会で日頃の運動量が減るうえに,高脂,高カロリーの食品が蔓延する,健康的とはいいにくい環境である.その上,異国で暮らすストレス,家族や親戚からのサポートの欠如,不十分な医療保険制度の弊害などを掛け合わすと,健康の維持に問題があってもおかしくはない.
こんな心配をするのは単なる老婆心からだけではなく,過去の研究の裏付けも存在する.特に筆者の専門の糖尿病の分野では,海外移住による環境の変化が,日本人の糖尿病の罹患を押し上げる,ということがよく知られている.元来日本人の糖尿病有病率は,国際的に見て非常に低いほうであった.特に食料難で粗食が常であった戦後の一時期などは,糖尿病とは無縁な日本人がほとんどであったようである.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.