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Perspective●展望
血糖値は治療のターゲットかマーカーか?
Plasma glucose value ; a treating target or just a marker of risk
𠮷岡 成人
1
1北海道大学大学院免疫代謝内科学
pp.118
発行日 2007年3月15日
Published Date 2007/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415100283
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空腹時血糖値が126 mg/dL以上,または,随時血糖値もしくは75 g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値が200 mg/dLであることが複数回確認された場合には,「糖尿病」と診断されます.従来から,糖尿病の診断基準は糖尿病網膜症発症のリスクをもとに作成されています.日本の代表的疫学研究である久山町研究でも,米国の国民栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey;NHANES)やピマインディアンを対象とした研究からも空腹時血糖値で126 mg/dL(7 mmol)付近,75 g OGTTの2時間値が200 mg/dL(11.1 mmol)を超えたあたりから糖尿病網膜症の発症が増加してくるのです.
つまり,空腹時血糖値が126 mg/dL,随時血糖で200 mg/dLを超えなければ,糖尿病に特異的な細小血管障害である糖尿病網膜症の発症をかなりの程度抑止しうることになります.しかし,動脈硬化性疾患である虚血性心疾患や脳血管障害はごく軽微な耐糖能障害である「境界型(impaired glucose tolerance test;IGT)」の段階から増加してきます.急性心筋梗塞でICUに運び込まれた患者さんの60%もの方たちが耐糖能障害を併発していることは多くの施設で確認されています.循環器内科医や糖尿病の大家たち,製薬メーカーは言います.「狭心症,心筋梗塞の抑止のためには厳格な血糖コントロールが必要だ.」と….それは,事実であり真実なのでしょうか?
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