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冠動脈疾患のスクリーニング検査として冠動脈MDCTは有用である.
Japan Diabetes Complication Study(JDCS)の中間解析の結果では,糖尿病患者における冠動脈疾患の発症数は,患者1,000人あたり1年間に8.8人であると報告されており,日本人一般の発症数の2倍以上である.冠動脈疾患の診断に有用な検査として,従来,非侵襲的な検査として,心電図検査(運動負荷心電図検査,Holter心電図検査を含む),心エコー図検査,心筋血流シンチグラフィー,侵襲的検査として,冠動脈造影などが用いられていた.これらの診断modalityの中で,冠動脈を直接観察することができるのは冠動脈造影のみであった.心臓は拍動しているため,従来のCTでは心臓そのものにしても,冠動脈にしても,鮮明な画像を得ることは難しかった.1998年に4列のMultidetector-row CT(MDCT)が登場して以来,急速にディテクターの多列化が進み,従来のCTに比べてより短時間で,より高解像度の心血管の画像を得ることができるようになった.現在,主流となっているのは64列のMDCTであるが,これだと10秒程度で心臓全体をスキャンすることが可能であり,非侵襲的に細密に冠動脈を描出することが可能となっている.さらに,自由に断面を設定することも可能であり,プラークの性状についても一部ではあるが評価することができるなど,冠動脈造影では得られない情報を得ることも可能である.MDCTによる冠動脈の評価は時間および空間分解能の点でまだ従来の冠動脈造影に比べ十分ではなく,高度の石灰化が存在する場合や心拍変動が大きい場合には正確な評価が困難な場合もある.しかし,MDCTは入院の必要がなく,64列MDCTを用いた冠動脈病変に対する陰性的中率は98~100%と極めて高いことから,冠動脈疾患のスクリーニング検査としての有用性は非常に高い.
冠動脈MDCTは冠動脈疾患のスクリーニング検査として有用であるのみならず,冠動脈造影ではわからない閉塞している血管の走行を予測し,同部のプラークの性状を評価することも可能であることから,慢性完全閉塞病変に対して経皮的冠動脈インターベンション(Percutaneous Coronary Intervention;PCI)を試みるうえでも有用なmodalityであると考えられる.
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