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メタボリックシンドロームの定義は
元来,高血圧,耐糖能異常,脂質代謝異常,肥満,高インスリン血症(またはインスリン抵抗性)などの心血管病の危険因子は合併することが多く,1988年にReavenによりsyndrome Xのリスク集積症候群の概念が提唱された.しかしその後,インスリン抵抗性症候群や内臓脂肪症候群など,同じような概念がさまざまな呼称で提唱されたため,これを一つの疾患概念として統一する目的で,1999年にWHOがメタボリックシンドローム(MS)という名称とともに新たな定義を発表した.その後民族・地域ごとに診断基準が作成され,統一されたものはない.ここでは2005年にわが国のメタボリックシンドローム診断基準検討委員会1)によって作成された診断基準(日本基準)を用いて解説する.MSの日本基準では,立位で測定した臍周囲の腹囲が男性85cm以上,女性90cm以上の内臓肥満を必須とし,さらに,1)130/85mmHg以上の高血圧,2)空腹時血糖値110mg/dL以上の高血糖,3)中性脂肪150mg/dLまたはHDLコレステロール40mg/dL未満のいずれかを満たす脂質代謝異常の3項目のうち2つ以上該当する場合にMSと診断する(Box 1).
MSがもたらす悪影響は
MSが心血管病に与える影響を明らかにするために,1988年に福岡県久山町の循環器健診を受診した40歳以上の住民2,452名を14年間追跡した成績を用いて,MSと虚血性心疾患発症との関連を検討した.MSの定義は前述の日本基準を用いた.その成績をみると,MSを有する群では虚血性心疾患発症の相対危険(性・年齢調整)がMSのない群に比べ1.9倍有意に高かった(Box 2).わが国の一般住民においても,MSの存在は虚血性心疾患発症のリスクを有意に増加させることがうかがえる.
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