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特集 インスリン治療をマスターする
先生,患者さんはこう思っています―看護師のみたインスリン治療
Insulin therapy from the nurses view point
久保田 睦子
1
,
黒澤 寿子
2
,
土手 朝子
3
1北海道大学病院 外来ナースセンター
2東京女子医科大学 糖尿病センター
3天理よろづ相談所病院
pp.41-43
発行日 2004年1月15日
Published Date 2004/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415100117
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インスリン「苦汁を飲んで」受け入れる
Nさんは60歳の男性です.ケトーシスで入院しインスリン治療を導入しました.自己注射の手技はすぐに覚え,特にインスリン注射への抵抗感を示す様子もありませんでした.医師は「Nさんは受け入れの良い人だ」と常々言っていました.ある時,Nさんは医師に「そのうち注射をやめられるか」と尋ねました.医師は「やめられる場合もあるが,今は注射が良い」と答え,Nさんはそれ以上訴えませんでした.しかし,Nさんは折に触れ,筆者に「4回が最善の方法ならやりますよ.でもがんばれば3回,2回になるんでしょう?」と言っていました.そして「インスリン注射をしていることをまわりの人に知られたくない.かっこ悪いから.足を切った人も注射をしていて,ああなっちゃうんだと思われるのがいやだ.」と話していたのでした.
一見,受け入れの良いNさんでしたが,インスリン療法に対して強い負担感を抱いていました.コントロールを良くしてなんとか回数だけでも減らせないかと考え,インスリンは身体のためだと自分に言い聞かせているNさんのつらい気持ちが,筆者には痛いほど伝わってきたのでした.インスリン注射を自分でしなかったり,攻撃的になるなど心理的な反応を示す人はインスリン注射がいやだということがわかりますが,実はNさんのように苦汁を飲んで受け入れている人のほうが多いのではないかと思ったのでした.
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