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Editorial
糖尿病への外科医の挑戦
Surgeon's challenge for the diabetes mellitus
石井 均
1
1天理よろづ相談所病院 内分泌内科
pp.674
発行日 2005年7月15日
Published Date 2005/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415100011
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筆者の手元に1989~90年の新聞記事のスクラップがある.政治の世界では東西冷戦の象徴であったベルリンの壁が崩壊,新しい時代が到来しようとしていた.日本の医療界では「脳死問題」と「臓器移植」が熱く議論されていた.外科医たちはこの議論の間にも重症患者が命を失っていくことを歯がゆく思っていた.
このような状況のなか,1989年11月,島根医科大学第2外科チームは日本で初めての生体肝移植を行った.新聞記事には,「移植医療の新しい道を開いた」という肯定的意見とともに,「技術未完成,免疫抑制剤の功罪,費用,親への圧迫」など多くの慎重かつ批判的な意見が掲載されている.このころ京都大学のチームも生体肝移植の準備を進め,実験で安定した成績を得られるようになっていた.人への応用を準備していたとき,このニュースが飛び込んだ.議論の末,手術は見送られた.「今やると,大学間の先陣争いと見られかねない.それは,この手術に対する社会的認知をゆがめる可能性がある」.それが京都大学チームの結論だった(田中紘一:本号Master Interview).京都大学第1例が行われたのはそれから7カ月後,1990年6月のことである.
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