JIM Report
「痴呆患者の経管栄養についての臨床的意義」についての考察―「大西論文」を補足する
今村 貴樹
1
,
金井 弘平
1
,
秋谷 弘樹
1
,
松岡 角英
1
1千葉健生病院内科
pp.862-863
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903622
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本誌2002年3月号に「痴呆患者の経管栄養についての臨床的意義」(以下,大西論文と略す)という論文が掲載された.大西論文の主張である「痴呆患者における経管栄養の,本人への臨床的利益を見いだすことはできなかった.エビデンスで質の高い論文・証拠が全く得られなかった」という指摘は妥当だとは思う.しかし,実際の臨床現場で常に「人工栄養法を導入すべきか」を悩んでいる医師もしくは患者サイドにとっては,エビデンスがどうであれ,依然選択を迫られる問題であることに変わりはない,そこで筆者は,当院での経験を基に,経管栄養法のみならず静脈栄養法も含む広く人工栄養法一般を痴呆患者に導入すべきか否か,導入した場合の延命利益について述べることにする.なお筆者は,平成13年6月10日に開催された日本プライマリ・ケア学会で,「超高齢者における在宅栄養法についてどこまで行うべきか」という演題で発表しており,今回の論考にそのデータの一部を使用することを初めにお断りする.また,この論文では延命効果を主に論じ,患者のQOLについては触れない.
大西論文の欠点は,自らも述べておられるとおり,「摂食障害の臨床的意味は多様である.(中略)痴呆自体による摂食障害をその他の疾病と区別することが困難」というまさにその点にある.したがって,本稿では,各ケースごとに分けて人工栄養法の是非について述べる.
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