Update '97
経鼻チューブか胃瘻か
石田 暉
1
1東海大学医学部リハビリテーション学教室
pp.1019
発行日 1997年12月15日
Published Date 1997/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902320
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最近脳卒中患者の摂食嚥下障害に対するリハビリテーション治療の興味が高まり,学会(日本摂食嚥下リハビリテーション学会)も設立され,早期経口摂取の試みが積極的になされている.また,従来小児の摂食障害や口蓋裂などのみに認められていた摂食嚥下訓練に対する保険点数も本年度より脳卒中などの急性発症の嚥下障害に対しても認められるようになった.これによりますます早期からの嚥下障害のアプローチがしやすくなり,経鼻チューブをいたずらに長期に留置することが少なくなってくるものと期待される.わが国は欧米に比べ経鼻チューブの使用頻度も高く,留置期間も長い傾向がある.また経口摂取ができない患者が経鼻チューブから胃瘻に移行する頻度は低く,胃瘻が作られる場合でも時期が遅れる傾向にある.これはリハビリテーションの立場からも合併症の発生の点からも好ましい状態とはいえない.すなわち,チューブの留置により,粘膜が刺激され,分泌物が多くなり,誤嚥を起こしやすい状態になるからである.また噴門が開放されていることによる胃液の逆流のための肺炎も長期臥床者には問題となる.リハビリテーションの立場からもチューブがない状態のほうが各種の嚥下訓練がしやすく,後に経口摂取が期待できる症例でも,1カ月を越えた場合,胃瘻増設に踏み切る場合が多い.Nortonらは脳卒中の急性期に経皮内視鏡的胃瘻と経鼻チューブによる栄養補給の方法を無作為抽出し比較検討した.
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