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胎便吸引症候群は分娩の不手際に起因するか?
松原 茂樹
1
1自治医科大学産婦人科
pp.815
発行日 1996年9月15日
Published Date 1996/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901942
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胎便吸引症候群(meconium aspiration syndrome:MAS)は,成熟新生児の肺合併症で死亡率が高い.胎便で汚染された羊水が肺内に吸引され,肺胞上皮を損傷することで発症する.一見して他の合併症(心疾患や頭蓋内出血)のない成熟児が,分娩後急速に呼吸障害を示して死亡するので,両親は医療上の不手際があったのではないか,と不信感を抱くことが多い.
胎児は子宮内で低酸素状態(intrauterine asphyxia)に遭遇すると脱糞し,これが分娩時に肺内へ吸収されるわけだから,intrauterine asphyxiaを起こさぬように妊婦管理を行い,また万一胎便排出による羊水混濁が起こったとしても,分娩直後に口鼻を拭い,あるいは喉頭展開下に気道から胎便を除去してしまえばMASはブロックできる,と素人は考える.しかし事情はそれほど単純ではない.
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