巻頭言
飽食の時代—学会,雑誌,向精神薬の数
宮岡 等
1
1北里大学医学部精神科
pp.1042-1043
発行日 2002年10月15日
Published Date 2002/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902716
- 有料閲覧
- 文献概要
精神科医療をよくするために大学の精神科に何ができるか。すぐ思いつくのは,よい医師を育てることであり,診療の質を上げてそれを多くの精神科医が共有できるようにすることであり,さらには最前線の研究を行って科学の進展に寄与することであろう。こういう当然のこととは別に,教育機関に籍をおく精神科医として気になることがある。
まず学会の数である。精神医学関連の学会や研究会だけで,いったいいくつあるのであろうか。毎月のように開かれ,教室員の学会参加は奨励したいと思いつつ,それによって犠牲にされる診療,教育,研究に見合うだけの意義があるかと疑問に感じることが少なくない。比較的レベルが高いとされる学会でも,学会発表のうちその後論文にされていたのは3/4にすぎないというアメリカの研究があるが(Schwartz LM, et al:JAMA 287:2859-2863,2002),日本で多くの学会を広く対象として同様の調査をすればこれよりはるかに低率であろう。発表すべきことがあるから開かれる学会であるはずなのに,演題が足りないからと会長から応募を依頼され,自分が逆の立場になるとやっぱり頼んでしまうかもしれないと,反省しつつ応じてしまう。学会に出す演題を用意するために,本当に重要な研究にかける時間が少なくなるなどという笑えない話も耳にしたことがある。
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.