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1 アルコールと血圧;1日1杯/2 アルコールと高血圧
溝渕 和久
1
1今西医院
pp.1134-1135
発行日 1995年12月15日
Published Date 1995/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901705
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1 今週号でRandinらはアルコールは急性の昇圧作用を有することを示した.歴史的にアルコールは血管拡張物質と思われていたので,この事実は直感に反するものかも知れない.最近の疫学的資料によれば,アルコールは高血圧の10%程度の原因になっていると見積もられている.飲酒と血圧との間にはJ型の相関があり,収縮期圧および拡張期圧とも1日2杯を超える飲酒では増加する(1杯で約1mmHg増加する).しかし1日1~2杯の軽い飲酒では,飲酒をしない者に比べて血圧は低い.アルコールは低量では血管を拡張し,より多い量では昇圧作用を有すると思われる.
Randinらの報告はアルコールによる急性の昇圧作用の機序に関しても言及している.健常人に2~3杯のアルコールに一致する量を短期静脈投与すると,血圧は平均10mmHg上昇し,骨格筋を標的とする交感系の血管収縮神経の活性が増加した.しかしアルコールと交感神経活性および血圧との関係は複雑である.例えば交感神経活性の充進は局所的血管抵抗の変化を伴わなかった.交感神経活性の充進はエタノールによる血管拡張作用によって相殺され,昇圧反応は主に増加した心拍によると示唆された.交感神経系の血管収縮をα遮断薬でブロックすると,アルコール投与により血管抵抗と血圧は低下した.
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