忘れられない患者さんに学ぶ
謙虚に,しかも自惚れながら
佐藤 純一
1
1石岡第一病院
pp.1059
発行日 1995年12月15日
Published Date 1995/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901681
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「臨床医は謙虚でなければ務まらない.しかし,自惚れなければやっていけない.」
一見矛盾するようだが,臨床に携わる者としての正直な感想である.医師免許を得たその日から,何でもできる,何でも知っていると自惚れる人間はいないだろう.しかし,1年たち,2年たつうちにそれなりの研修を積み,手技や診療のコツを覚え,ある時期になると「怖いものなし」の心境になってくる.しかし,数々の患者を前にその自信もアッと言う間に崩れ,自分の無力さを思い知ることになる.しかし,人間には「自惚れる」能力がある.日々の臨床を通じて徐々に自信を取りもどし,また自惚れ,そしてまた足元を掬われる.医師になってから現在までその繰り返しだったような気がする.しかし,いったん転んで次に立ち上がった時,人は以前よりも確実に強くなっていくものだと思っている.これも自惚れなのかも知れないが.
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