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医原性疾患—謙虚さを求める
佐々木 智也
1
1東大物療内科
pp.896-898
発行日 1969年8月10日
Published Date 1969/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202763
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医原性疾患の発生と薬剤
多くの疾患の病態が,古い教科書に記載されているようなありのままのnativeな姿から著しく変化しつつある事実は,多くの臨床家の認めるところである.その原因の一部は社会生活や食習慣の変化に求めうるが,最も大きなものは医療もしくは薬剤の影響である.これによって生ずる変化を医原性の変化,特定の疾患を発生するならば医原性疾患iatrogenic diseasesということもすでに広く知られていると考えている.
一般的にいって広く知られていると推定はしたものの,現実にはどうであろうか.ときには医原性疾患とは,副腎皮質ステロイドホルモン副作用の別名であると理解しているものに出会って,あわてることがある.ことばの意味をよく知らないのは,単に相互意志疎通の便を欠くにすぎないので,ここで問題にする必要はないが,医原性の変化がいかに広く,深くわれわれの取り扱う人間に食い込んでいるかを知らないのであれば,事は重大である.病気の治療にきわめて有用な薬剤は,その作用の増強とともに医原性疾患を発生しやすくなっている,医師は病.気を治しうるようになったと奢る心を持ってはならず,むしろ医療の重大な結果に対して謙虚に反省すべきである.
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