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特集 癌検診のメリット・デメリット
癌検診の評価
経済的視点からみた癌検診
Economic Aspects of Screening for Cancer
濃沼 信夫
1
1東北大学医学部病院管理学教室
pp.396-400
発行日 1995年5月15日
Published Date 1995/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901497
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癌検診をめぐる環境の変化
今日,わが国は経済の低成長時代を迎え,人口の高齢化,医療技術の進歩に伴う国民医療費の高騰に対応するため,限られた資源の有効利用と適正配分を幅広い見通しに立って検討すべき時期に立ち至っている.とりわけ,癌はわが国の死因の第1位を占め,罹患数,死亡数および医療費は引き続き増加傾向にあり,その対策は経済面からも最優先の課題となっている.早期発見,早期治療という癌の2次予防が特に強調された過去四半世紀,癌検診はそのための有力な手段としての期待が高まり,わが国や欧米の一部の国で,罹患率の高い癌の検診が行政施策として推進されてきた.しかし,個々の癌検診の有効性についてはいまだ議論の多いところであり,癌の1次予防とのバランスなど,癌対策全体における検診の位置づけや重点の置き方は国により大きく異なっている.
わが国は,集団検診または人間ドックという形態で,癌検診が最も積極的に展開されてきた国の1つである.しかし,食生活の西欧化などに伴って,部位別,年齢別の罹患率や死亡率には大きな変化が生じており,現行の癌検診の精度や有効性,対象年齢,受診間隔,カバー率(未受診者対策),実施形態などについて,科学的な立場での再検討が必要となっている.これは,そのほうが望ましいというような悠長な話ではなく,保健・医療財源の逼迫という事情の下での火急の課題となっている.
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