連載 病院管理フォーラム
■医療経営と可視化・5
医療経済の視点から
後藤 励
1
1甲南大学経済学部
pp.173-175
発行日 2008年2月1日
Published Date 2008/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101126
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
医療経済学では,古くから医療の特殊性の1つとして,「患者と医療機関の間の情報の非対称性」を挙げている.治療成果などについての医療情報の可視化の目的は,経済学的には,本来患者側が正確にはわからない医療の質に関して,両者の情報の非対称性を埋めることである.その結果,患者側は質に基づいて医療機関の選択をし,医療機関側は質についての競争を行うことになり,結果として質の低い医療機関は淘汰される.
このような患者の選択を通じての質の向上は,通常のモノやサービスでも想定されるものである.さらに医療の場合は,紹介医の医療機関選択が質の向上圧力を与えることも考えられる.本来紹介医は細かな情報を判断することのできない患者の代理であることが求められるため,紹介医の医療機関選択は原則的には消費者側の行動といえる.一方,質の情報を公表することが直接医療機関内部での質向上努力を増加させる場合もある.このように,質の情報は消費者側,供給者側両方の経路を通じて医療の質の向上に役立つ可能性がある.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.