忘れられない患者さんに学ぶ
庶民の死
斎藤 芳雄
1
1ゆきぐに大和総合病院
pp.871
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901298
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そのジイさんとの出会いは,私が新潟県にきて1年ほどたったころだった.20年以上も前のことである.雪が消えかけた3月末のことだったと思う.70歳過ぎの,そのジイさんが診察室に入ってきた.ふだんは別のドクターにみてもらっている糖尿病の患者さんだ.経口の血糖降下薬を1錠飲んでいた.
雪の多いこの地方では,当時,年寄りは冬場,病院に来ないで,薬だけ処方されていることが多かった.そのジイさんも,12月ごろ診察に来たきりで,その日まで薬だけもらっていたのである.
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