Generalist and Specialist
あるCPCの思い出
金澤 一郎
1
Ichiro Kanazawa
1
1東京大学医学部神経内科
pp.943
発行日 1992年11月15日
Published Date 1992/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900620
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私が学生時代,某病院のCPCに出席した時のことである.症例は亜急性細菌性心内膜炎からの塞栓による多発性脳梗塞であったと記憶している.臨床の受け持ち医から経過の説明ののち,臨床的にははなはだ特殊な(当時の私にとっては世にもまれな)診断であろうと報告された.その後に病理からの最終診断が告げられた時に,フロアからは「そんなありきたりの病気であったのか」という思いをこめた驚きの声があがったのを今でも覚えている.問題はその後のことであった.病理医が「心雑音があったはずですがね」とつぶやいたのに対して,コンサルタントとしてその症例をみていた神経内科医が「私は神経内科が専門であって,聴診器を使わないから心雑音があったかどうかは知らない」と平然としていたのを今でも鮮やかに思い出す.
あれから25年以上たって私は神経内科医となり,いわゆるspecialistといわれる部類に属している.残念なことだがgeneralistでないことだけは確かであり,例えば甲状腺疾患や糖尿病の患者の診断から治療まで自分の力だけで行うことは今や到底できるとは思えない.基本的なことはできるとしても,最近のその方面の臨床的なコンセンサスがどうなっているのかについての知識を十分に得るだけの状況にない.
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