Japanese
English
Special Article
癌患者の痛みの救済計画―WHO専門家の立場から
WHO Cancer Pain Relief Programme from an Expert's Point of View
武田 文和
1
Kathleen M Foley
2,3,4
,
Fumikazu Takeda
1
1埼玉県立がんセンター病院
2Memorial Sloan Kettering Cancer Center Pain Service
3コーネル大学医学部神経学
4コーネル大学医学部臨床薬理学
pp.84-88
発行日 1992年1月15日
Published Date 1992/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900333
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
□癌疼痛治療の歴史
癌の痛みに関する研究は,40年の歴史を持つ痛みの臨床薬理学研究とほぼ同じ長さの歴史を持つ.ヒトでの鎮痛薬の代謝に関する知識は,1950年代以降とくに発展した.麻酔学の領域では神経ブロック,新しい局所麻酔薬やopioidsが開発された.1968年に開設されたSt.Christopherホスピスが癌患者の主症状である痛みに,heroineやmorphineをBrompton cocktailとして経口投与する方法を推奨してから,痛み,その他の症状のコントロールを中心とした進行癌患者のケアの必要性を訴える大きな活動が広がった.また,1970年代における神経科学の発展のもとでは,opioid receptorの発見,substance P, serotonin, endorphin, enkephalinなどの神経物質の痛みへの関与,神経系における特定の部位と経路,neuropathic pain (deafferention pain)に対する抗うつ薬の効果,急性痛と慢性痛に対するopioidsの硬膜外および髄腔内投与などの進歩があった.
同時に,痛みの専門学会が組織された.1975年フローレンスで第1回国際疼痛学会が開催され,世界各国の専門家グループが癌患者を痛みから解放する国際的プログラムの必要性を討論した.1978年,ミラノの国立がんセンターのVentafriddaがベニスで第1回癌疼痛国際会議を主催し,その講演録はすばらしい教科書になった.
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.