産婦人科こぼれ話
往診
中山 安
1
1東横病院
pp.40-41
発行日 1958年6月1日
Published Date 1958/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201491
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往診は今は無論のこと若い時分から僕は嫌いだつた.だいいち産科の場合はお産が済むまで動けなくなるので甚だしく時間をつぶす.産科手術でもするものであれば,さつさとやつてのけるのであるが,それにしても,すぐ帰宅するわけにもゆかない.況んや婦人科の往診となると診察はしにくいし処置もやり難い.と言つて全く往診しないわけにもゆかないので医者というものはつらいことだと,かこつたことは一度や二度ではない.
家庭に患者を診にゆくことにも,いろいろあつて世間というものが解ることもまたしばしばである.だいたい医者や助産婦という職の者は社会の各層の人に目みえるのが面白い.上は大臣大富豪から下は素寒貧の家にまでゆく.実に万偏なく,われわれは家庭に出入するのである.
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