随想 明日を担う公衆衛生
かくも親しき赤痢
長崎 護
1
1東京都衛生局食品衛生課
pp.438-439
発行日 1966年8月15日
Published Date 1966/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203312
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美しき日本の風土に馴じみ,われら日本人にこよなき親しみと愛着をもった赤痢菌諸侯も,ここ数年来は寄る年波を感じたのであろうか,とんと元気がなく,同胞の数は一路衰退の傾向をみせていた。ところが,昭和41年の日の出とともに,かれらも干支に因んだのであろうか,西に東に,北に南にと大活躍を始めた。都下東村山の文化村で,専用水道の井戸の中に浸入し,村を総なめにした事件は今なお記憶に新しい。かくして,東京都では昨年に比べて約3倍近くの赤痢患者の発見をみるに至っている。
寄せては返す波のように,いつ果てるともしれない赤痢菌との葛藤の繰返しを見るにつけ,あるいは身をもってその渦の中に投げ込まれたりすると,何か,欠けているモノの数々を知らされる。私が,かつて保健所で経験した赤痢事件の1つをご紹介しよう。
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