法医学からみえる"臨床"・1
しいたげられる幼児達:"被虐待児症候群"―母親の嘘を見抜いた勇気ある医師
高濱 桂一
1
Keiichi Takahama
1
1宮崎医科大学法医学教室
pp.94-95
発行日 1991年4月15日
Published Date 1991/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900034
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事例 198○年10月16日 司法解剖
15日早朝,母親に連れられ小児科医院を受診した女児1歳11月を診た医師は,頭蓋内出血を疑い,市民病院脳外科への転送の手続きをとった.同時に,全身に散在する多数の瘢痕と損傷の異常さ,それに母親の態度のぎこちなさから被虐待児症候群を疑い,警察にも電話で事情を説明しておいた.脳外科では開頭手術の準備の途中で,容態が急変し死亡した.法医剖検室での外表検査では,ほぼ全身に散在して多数の新旧瘢痕と皮下出血を認め,瘢痕の中には小指頭面大の,恐らくタバコの火による火傷痕ではなかろうかと思われるものも認められた.頭部には数条の線状皮下出血があり,頭皮下の広範な出血と共に,頭蓋腔内では左側頭葉から左頭頂葉にかけて大きさ7.5×8.5cm,厚さ0.4cm1個,さらに右後頭葉に大きさ6.0×3.0cm,厚さ0.4cm1個のそれぞれ独立した硬膜下血腫を認め,その重量は合わせて約50gであった.
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