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●初学者にもわかりやすい呼吸器臨床の面白さがあふれた一冊
総合診療誌『JIM』の「臨床の勘と画像診断力を鍛える コレクション呼吸器疾患」シリーズは,すでに第40回に迫っている.この中から日常でよく経験する15症例を選び,呼吸器疾患へのアプローチの仕方を一般内科医や研修医向きにまとめられたのが本書である.このシリーズの基になっている沖縄県臨床呼吸器同好会が40有余年間で280回以上開かれているのは,誠に慶賀に堪えない.卒後9年目の私が沖縄県立中部病院勤務の若き日に宮城征四郎先生の門を叩き,①H&P(history takingとphysical examination;病歴聴取と身体診察)を重視した診断推論,②文献(エビデンス)による裏付けの訓練,③チーム医療下での屋根瓦式教育の実際に感銘を受けたのは1983年だが,歴史の一コマかと感慨深い.
本書の長所は数多い.第1には,中身の濃い,質の高い症例検討会の臨場感に浸れることである.記録に残そうとする藤田次郎先生の発想と持続力の賜物である.第2に,宮城御大の出番と肉声が十分に確保されている.文字通りの「診療の勘どころ!」から教わるものは多い.H&Pやバイタルサインの活用をめぐる宮城節には従来名人芸がつきまとったが,それをきっちりと味読できるのはありがたい.第3に,重鎮の方々の「画像診断のポイント」や「コメント」にもまばゆい「クリニカル・パール」が散りばめられている.第4に,藤田先生の「文献考察!」が貴重である.ほぼ毎月の努力には頭が下がる.第5に,何よりも,呼吸器臨床の面白さ,楽しさがあふれている.徹底して実際的で,衒学的でない.口語体なのもうれしい.EBM用語も少なく,初学者にも極めて入りやすい.
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